小説:東野圭吾「幻夜」について

私の好きな小説家のひとり、東野圭吾の作品に「幻夜」というものがあります。先日のツイキャスで存在を思い出し話題にしたのですが、何人かが実際に読んでくれたので今回はこの小説の事を書きます。

なかなか分厚いですが読んでくれた人がいて嬉しいです。同じ作品について話が出来るのは楽しいですね。感想もありがとう。

※この先ネタバレありますので、嫌な人は先に小説を読んでくださいね!

あらすじ
1995年の阪神・淡路大震災に始まり、地下鉄サリン事件等を経て2000年1月1日までの現実と虚構を織り交ぜて、物語は進む。父の通夜の翌朝に起きた大地震後に、借金返済を強いていた叔父を殺害してしまう水原雅也。ふと気付くと、そばには見知らぬ女が…。新海美冬と名乗る彼女に犯行を見られたのか、雅也には確信が持てない。やがて、震災が取り持つ奇妙な縁で、美冬と雅也は、まるで共存するように助け合いながら生きて行くことになるのだった。その後、2人は震災を忘れるかのように、希望を抱き上京する。しかし彼らの行く先々で、事件と陰謀が蠢いて行くのであった。やがて刑事加藤亘が、奇妙な偶然に気付き…。

というものです。

後にドラマ化もされています。ドラマ版では登場人物も減りストーリーも少し省略されています。

主な登場人物は
・新海美冬(主人公)
・水原雅也(美冬に弱みを握られた協力者)
・加藤亘(刑事)

そして、美冬に利用される男達
・青江真一郎(美容師)
・浜中洋一(美冬の元上司)
その他、大勢が巻き添えになります。

私はこの話が大好きなのですが、作品について検索するとサジェストに

「幻夜 ラスト 納得いかない」
「幻夜 雅也 かわいそう」
「幻夜 美冬 サイコパス」

等とネガティブなワードが並びます…。
レビューを読んでも、殆どの人達は美冬を悪女呼ばわりし、雅也に同情しています。後味の悪いバッドエンドというのが大方の認識のようでした。私は不思議でならなかったのですが、それもそのはず。

実は、この幻夜という作品の本質は“SM小説”なんです。そうとは知らずにうっかり読んでしまった一般の皆さんが理解に苦しみ、ネガティブな感想を抱いているのだろうと思いました。

この話は、生まれながらの“女王”である新海美冬と男達の物語であり、結末は紛れもないハッピーエンドであると私は思っています。

各登場人物について私の感想は、

・水原雅也
好きです。良きM男と思います。美冬と心中するための“最高傑作”は、2人の世界を守る為に使われました。遅かれ早かれ雅也は美冬の為に死ぬのですから、それが早いか遅いかの違いはあれども可哀想だなんて言うことはありません。(ドラマ版ではラストの2人の関係性がもう少しわかりやすく表現されています。)

・加藤亘(刑事)
好きです。自覚のないタイプのM男と思います。この作品の最も興味深い点はこの加藤の存在です。美冬を執拗に追いかける刑事ですが、この刑事には正義感というものはありません。美冬に魅了され、美冬をこの手で捕まえたいと私利私欲で追いかけて行くのです。しかし美冬を逮捕したいなどと言うのはただの“独占欲”ですから、その先に待つのは破滅です。(多分、一般の皆さんはこの加藤の行動が正義感から来るものだと勘違いしているのだと思います。)

自我よりも主従を重んじた雅也と、自我が暴走してしまった加藤。正しい結末だったと思います。

その他の養分、

・青江真一郎(美容師)
損得勘定で動く浅はかな男です。美冬を独占出来ると思いあがり、嫉妬心で破滅します。一般的な社会においては成功者の部類ですが、女王を頂点としたヒエラルキーにおいて損得勘定をする者は出世できません。

・浜中洋一(美冬の元上司)
ヒエラルキーの外にいる一般人です。美冬に一矢報いてやろうと出しゃばった真似をしてハエのごとく叩き潰されます。

美冬は、ただありのままに生きているだけです。その自由さを妬ましく思う人の目には悪女のように映ってしまうのかもしれません。

私の好きな名言の一つにこんなものがあります。(※この小説とは無関係の名言です)

「男は命を貰った死である」

貰った命に名誉を与える事だけが男の宿命であるという意味の言葉です。
男は、何の為に死ぬのか?

幻夜において、雅也の死にはそれがあったと思います。そして、そういった決断をする男性がいることも、一般の皆さんには理解のできないこの世の真実の側面なのでしょう。

ここを読んでいる皆さんは、幻夜を読んでどう感じるでしょうか。
美冬を悪女だと言うでしょうか?
雅也を可哀想だと言うでしょうか?
きっとそうは思わないと思います。
それこそが私達のマイノリティたる所以なのだろうと思いますね。

ちなみに、この「幻夜」は東野圭吾の別の小説「白夜行」の続編であると言われています。白夜行を知らなくても、幻夜のみで楽しめますので問題ありません。白夜行の方が知名度もあり人気のようですが、私は幻夜の方が断然好きです。

白夜行もいいんですけどね、なんだか痛々しい気がしてしまう。野心に理由は要らない、と、私は思います。

最後に、ここまで律義に記事を読んでくれた人へ。最後まで読んでくれるあなたが大好きです。おススメの面白い小説などあれば是非教えてくださいね。それではまたね!

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